西野七瀬という女優
アイドルを卒業した人の中で、俳優として、私が一番注目していたのが、実は、西野七瀬であった。他の卒業したアイドルに比べて、何故か、その雰囲気にガツガツしたところがなくて、とても、不思議な存在であったからだ。
その西野七瀬が近頃、そのようなキャラとは真逆の役で演技をしていることが多くて、結構、驚いている。事務所側の意向もあるのだろうが、こっちの方向へ行くのかとビックリした。アイドル出身だから、汚れ役的な配役には行かないと勝手に思っていたが、違ったのである。
そして、その役柄を上手に演じることも出来ていてるのだ。そう、全く違う女性のキャラをしっかり演じることが出来るのだ。多分に、彼女は、その印象通りに自然体でニュートラルでどんな色にもあまり染まっていないので、逆に、どのような人物にも、入っていけるのに違いないのだ。
これは、多分、根本的に女優にとって、とても、大事なことなんだろうなと思う。ある意味、持って生まれた才能なのであろう。(と、勝手に私見として常日頃思っている。)そういう意味で、彼女は、実は、持っている才能を見せ始めているのである。なので、今後更に、女優としてのレベルを上げていくのではないかと密かに期待もしている。
映画監督達は、西野七瀬のそのような白紙の心のようなものの貴重さに、何となく、気付いて、使い始めているのだろうな。とも、勝手に思ってもいる。
そんな女優西野七瀬の存在を、『孤狼の血LEVEL2』と『鳩の撃退法』という映画の中で、しっかりと感じることが出来る。
孤狼ナイト
今年の5月に開催された『孤狼ナイト』。白石和彌監督と西野七瀬と小栗基裕。映画製作の裏話も聴けて、面白い。
この映画出演のオファーに対して、世界観の自分とは全く違うところに飛び込んだと、話をしている西野七瀬。あまりにかけ離れているので、驚いた七瀬に対して、白石監督が何故出演してくれたのかと尋ねたところ、「かけ離れているからこそ、飛び込んでみたい」と思ったのであった。
撮影期間中、広島弁に囚われていたなあちゃん。強い男は好きかと聞かれて、この映画の男達は飛び過ぎている。普通の人とは違う。話についていけないだろうと。だが、そんな彼女は、恐ろしい男達の中で、しっかりと、肝のすわった女を演じることも出来るのだ。
孤狼の血LEVEL2
令和の893映画の最高峰
『孤狼の血』のレベルをしっかり受け継いだ今の893映画の最高値であろう。昭和の時代と広島をしっかりと描き切っている。役所広司の魂を受け継いだ松阪桃李の演技もさることながら、新しく今回の LEVEL2 に登場してきた俳優のキャラの濃さが際立っていた。鈴木亮平も斎藤工も吉田鋼太郎も。
スナックのママ西野七瀬
893な漢どもがこれでもかと暴れ狂う現代の仁義なき戦いそのものの映画『孤狼の血 LEVEL2 』の中で、西野七瀬の存在は逆に大きい。
スナック「華」のママの近田真緒役である西野七瀬。刑事日岡(松阪桃李)のスパイでもあるチンタ(村上虹郎)の姉である。スタイルといい、髪型といい、フンイキといい、眼差しといい、方言といい、ここまで、スナックのママが似合うとは思わなかった。ハスッパな感じがまた良い。西野七瀬。仕上げてきたよ。
主人公の刑事日岡(松阪桃李)と深い関係にもあるスナックのママ西野七瀬。
仁義なき戦いを続けるむくつけき男どもの中に咲いた唯一のあだ花。西野七瀬。彼女の存在が、男達の世界に光と影を落としていく。
村上虹郎を叩く西野七瀬。
今まで、こういう世界の女性をアイドルが演じたことがあったであろうか?
鳩の撃退法
『鳩の撃退法』での喫茶店のアルバイト「沼本(ぬもと)」役も、味があった。原作小説での彼女のキャラを十二分に表現出来ていたと思う。彼女は、ストーリーのキイパースンでもある。
彼女のこれからの女優人生は、多分、このような主役ではないが、主人公に影響を与える女性としての役を色々こなしていくに違いない。誰にでも出来そうで出来ない、面白い役柄のオファーがこれから、きっと、多くなっていくのだろうな、多分。そのくらいに、彼女には、不思議なくらいに、色々な人物の役をこなしていけそうなカメレオン的な部分が潜んでいるのである。
7つの顔を持つ女優に
土屋太鳳ではなく、西野七瀬。前田敦子ではなく、西野七瀬。白石麻衣ではなく、西野七瀬。彼女でしかできない役柄を多分、これから、映画やテレビの中で、多く観れる機会が増えていくと確信している。
既に、10月からは主演ドラマ「言霊荘」(テレビ朝日系)も控えている。多くの若手女優陣を携えて。乃木坂46のアイドルを辞めて、役者の仕事のまわって来ないことが多く、落ち込んだ時が多かったようだが、芸能界から消えずに自分を信じてくれて、映画界の為には、良かったのではないかと思う。
西野七瀬、7つの顔を持つ女優になっていくのは、間違いない。彼女の持っている根っからのキャンバスの白さの広いことが、これからも彼女を女優として支えていくだろう。
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