夢を与える
芸能界という世界。三浦春馬、芦名星と悲報が続き、その世界の裏と表の難しさを感じる近頃。このドラマは、その世界の内幕の一部を表現したものと言える。テレビ業界、スポンサー(CM)、芸能事務所、ステージママなどが取り入れられている。個人の自由や想いと芸能界での戒律。その2つがタレントの中で葛藤したら、どうなっていくのかを感じることの出来る面白い作品と言える。小松菜奈が主役で、かなり深い味のある作品となっている。
連続ドラマW 夢を与える [DVD]
フランス人の父親・トーマと日本人の母親・幹子(菊地凛子)を持つ美しい少女・夕子(谷花音)。母の幹子は幼い夕子をあるCMのオーディションに参加させる。広告代理店のクリエイティブディレクター・村野(オダギリジョー)に見いだされた夕子は芸能界入りし、数年後には大ブレイク。急速に人気が高まる中、夕子は世間のイメージと自分自身とのギャップに強い違和感を覚えていた。そんな最中、夕子は自由に生きているダンサー・正晃(真剣佑)と出会い、恋愛にのめり込んでいく。だがそれは、すべての歯車が狂いだす悪夢のはじまりだった。
内容説明
カスタマレビュー
ひとつひとつのシーンで各人物の感情や思考が伝わってくる作品です。映像としては全く描かれていないそれぞれの人物が大切にしていることやふとした日常の風景を想像してしまいます。
テレビやインターネットにより、人を容易に批判し、誹謗中傷し、笑い、またそれをした人を批判する無限ループを私たちは日常的に経験し、痛みを感じています。
その渦中の人にさせられてしまった少女とその関係者たち、それを取り上げるワイドショーの出演者や番組スタッフが描かれています。子供のころからタレントとして懸命に頑張って来た善良なひとりの人に対する尊敬や尊厳はあまりに軽視され、渦中の少女が傷ついて壊れてしまうかもしれないのを承知の上で、見ている側が耐えがたいほど傷つけます。そして傷つける側もみな何かを守り、目指し懸命に頑張っている。
正義も悪も嘘も本当も愛と気持ちの押し付けも、あらゆることの境界線が見えず答えを出すのが困難な時代であることを痛感しました。
ラストの、少女のそれらすべてを跳ね飛ばす心のままの行動はとても清々しいものでした。
最後には誰がどんな答えを出しても何を選んでも、多くの人がそれを温かく応援する世界でもあるのだと感じられ温かい気持ちになります。
小松菜奈の演技は秀逸でした。そして最後、彼女が死ななかったことが本当に「救い」でした。それが小説映画のトリック・レトリックだったとしても、生きててナンボですから。
綿矢りさ小説
夢を与える (河出文庫)
幼い頃からチャイルドモデルをしていた美しく健やかな少女・夕子。中学入学と同時に大手芸能事務所に入った夕子は、母親の念願どおり、ついにブレイクする。連ドラ、CM、CDデビュー…急速に人気が高まるなか、夕子は深夜番組で観た無名のダンサーに恋をする。だがそれは、悲劇の始まりだった。夕子の栄光と失墜の果てを描く、芥川賞受賞第一作。
内容紹介
原作である綿矢りさの小説は、主人公がタレントとしての自分と本来の自分の間で葛藤する物語。ブレークし露出が多くなっていくタレントの実態が書かれているまことしやかな小説。若くして芥川賞を取った綿矢りさの実力がわかる本作。読んでみるべし。
小松菜奈
このドラマ、小松菜奈の演技が光る。最後の沈黙の後の長いセリフが心に染みる。そして、屋上から、走り高跳び風に飛び越え落ちていくシーン。大変に、上手いラストシーンでありました。小松菜奈、ミステリアスだけでなく、極めて、意思のある女優であることを感じさせる面白いドラマであった。
美人であるが、美人を超えた存在感がある。そして、彼女のタレントとしての生活や精神も、実はこの映画・小説に一部はシンクロしているものではないかと感じさせる演技であったのである。最後の涙のシーンに、真実ありか。長回し撮影のかなり迫力のあるアップシーンでありました。必見の価値あり。
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