島田雅彦の小説『ニッチを探して』が面白い。ニッチを探してという題名にある通り、そのニッチとは何かも面白いし、この主人公の放浪の意味もまた考えさせられるものである。島田雅彦の何とも言えない目線が楽しい。こういうように、世の中を見ていきたいものである。
audible小説『ニッチを探して』
テアトロ・マサッティー vol.15
商品説明
背任の疑いをかけられた大手銀行員・藤原道長は、妻と娘を置いて失踪した。人目を避けた所持金ゼロの逃亡は、ネットカフェから段ボールハウス、路上を巡り、道長は空腹と孤独を抱え、格差の底へと堕ちてゆく。一方、横領の真の首謀者たる銀行幹部たちは、事件の露見を怖れ、冷酷な刺客を放つ――。逆転の時は訪れるのか。東京の裏地図を舞台に巨額資金を巡る攻防戦の幕が開く。
このカスタマーレビューが良い。
現代社会に生きる人なら、誰でも探しているだろう拠り所。
カスタマレビュー
ニッチを探して、自分だけの拠り所を探すストーリー。
ニッチというテーマは、主人公を誰とするかが考え深い。
作者はホームレスを題材に扱い、そこから現代にある空間的ニッチに焦点を当てている。
ストーリーの中には、家族愛・銀行の問題等、ドラマも含まれている。
構成が完璧で読みごたえがあった。
ニッチの意味
ニッチと言えば、英語学習で学んでいた頃は、多分、スキマということで定義していたと思うが、この小説で島田雅彦は、ニッチを拠り所として意識している。自分の生きてきた世界というテリトリーは意外と限られた狭小な場所で、自分が関係したことのないテリトリーが自分の前には極めて多く拡がっていることを通常、我々は意識することはない。そして、生活様式も常に自分の生れてからここまで培ってきたやり方で過ごしているので、それ以外のやり方を自分から求めることもあまりしない。
だから、この主人公である藤原道長のようにいったんホームレスという世界であるニッチに入っていくと、そのニッチから垣間見れる今までの生活や自分の今までのニッチが如何に悠長な甘いものであったかが反対に判ってくるのである。
だから、『ニッチを探して』というのは、実は、本当の自分を探してということで、あるのかもしれない。
ソロキャンプとかのニッチ
このようなホームレスになる極端なニッチ探しというのは厳しいが、別の意味でニッチな世界を見出せる方法はある。例えば、それは、ソロキャンプである。コロナ禍の今年は、かなりの人気が出たのである。お一人様の単独キャンプである。ヒロシを初めとするアウトドア好きのソロキャンパーのYouTube動画やゆるキャン△などのアニメやドラマでも話題のソロキャンプだ。
『ニッチを探して』の藤原道長のホームレス生活は、実はキャンパーの実態生活であるとも言えるのだ。極力、自然の中に入り込み、寝泊まりをするスペースを作り、飲食をしていく。常日頃の会社生活や都会ライフに疲れたのなら、ソロキャンプをお勧めする。貴方が辿り着いたキャンプサイトがこれからの生き方の拠り所になるニッチになるかもしれない。このソロキャンプから、自分の今までの生き方をゆっくり見つめ直すのも良いだろうね。
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