ジャンプ:佐藤正午小説の映画

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佐藤正午の小説の映画化

鳩の撃退法

この夏、もうすぐ、『鳩の撃退法』が公開される。そう、原作は、佐藤正午の小説だ。それについては、この間、自分でも、記事を書いたりもした。

鳩の撃退法:佐藤正午
巧みなストーリーテラーである佐藤正午の『鳩の撃退法』が映画化。もうすぐ上映される。小説が面白いだけに期待大。主人公津田伸一に振り回されよう。

そうなのだ。佐藤正午の小説は、結構、STORYが機知に富んでいるというか、精巧に出来ているのである。巧みなストーリーテラーなのである。そして、その小節の舞台は、間違いなく、僕らの通常の日常生活の中にあって、読んでいて、こういうことって、自分にも自分の周りにも起こり得ることだよなと確実に感じてしまう世界なのである。それでいて、読み進めるうちに、その話はサスペンスとしても一級品であり、読むのが止まらない魅力を持っているのだ。

だから、佐藤正午の小説は、結構、映画化されているのだった。ただ、今まで、それほどまでに、佐藤正午を認知するところの日本人が少なかっただけの話である。残念ながら。佐藤正午の小説の中の小説家である❝津田伸一❞の作品の如く、知っている人だけには人気のある何故かひねくれものの小説家の作品と言うイメージが強かったのかもしれない。

永遠の1/2

そこで、過去を振り返るのである。彼の小説は間違いなく、面白い。今も面白いが、昔も面白かった。今は、人生を長く生きただけあっての酒の量と知ることの出来た身の上話がとても増えたことで、佐藤正午の小説は、今も深みを帯び輝いているが、若い時は若い時で、その感性の鋭さがハードボイルド化されてもいて、若いくせに洒脱でそれでいて真理があって、日常生活のサスペンス化も結構あって、間違いなく、面白かったのである。そう、『永遠の1/2』のデビューの頃から。

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そこで、今回は、彼の小説の『ジャンプ』とその映画化作品に触れておく。これこそ、実は、過去の未来化のことかもしれないね。

ジャンプ

小説:ジャンプ

これは、ミステリーではないと厳しく糾弾されるミステリーファンが多いのでもあるが、佐藤正午をミステリー作家の中に入れてはいけないだろう。むしろ、恋愛小説家であろう。それも日常生活に潜む男女の心の機微を淡々と描いた純文学風ハードボイルドタッチの小説。ために、いつの間にか、それは、ミステリー仕立てになっているという感じの。それは、それで良いのではないだろうか。人の心は不思議だし、その心の向こうにある風景は何なのっていう辺りをうろつくのは、とても、ある意味、新鮮なのである。人の人生は、ある時の、あることで、大きく変わっていってしまうことがあるというのも、佐藤正午の小説の面白さでもあるし、人の人生の運命の有り様でもあるかもしれない。だから、この小説においては、【リンゴ】も、大きな運命のスタート地点の要素なのでもある。

つきあって半年になるガールフレンドが、泥酔した自分のためにコンビニへリンゴを買いにいったまま、翌日もその次の日も戻ってこなかった。主人公の会社員三谷は、彼女の姉と協力しながら、消えた恋人の行方を追う。彼女は事件に巻き込まれたのか、「失踪」したのか? 彼女の足跡が少しずつ明らかになり、手がかりをつかむために失踪後の足どりをたどる。それにしても三谷にはなぜ彼女がいなくなったのか、自分の元を去る理由がまったくわからない。果たして、その真相とは…。

   表紙の帯には「本書のテーマは失踪である」と書かれているが、失踪した側に立った描写は皆無であり、失踪された側からの描写に終始している。むしろ人は自分の前に現れた不可解な出来事とどのように折り合いをつけ、やがてそれを受容するに至るのか、その過程を描いた小説といえよう。

   おもしろい箇所がある。一人称で小説を語る三谷が、読者に対してある隠しごとをする。ひとりの人物について述べるとき、彼の語り口調は途端に歯切れが悪くなり、いかにも描写をあいまいにしたがっているのが明らかだ。もちろん著者の意図的な仕掛けで、ぼかす理由は後に判明する。彼の隠しごとは、ガールフレンドの失踪と大きく関係していた。その判明が小説のクライマックスだ。緻密なミステリーとは言い難いが、読者の興味を途切れさせることはない。意図的に隠ごと事をする三谷は、実は失踪の理由を半ばわかっていたのではないか…。読後、そんな三谷を滑稽に思うかもしれないが、読んで身につまされる男性も決して少なくないだろう。(岡田工猿)

内容紹介

映画:ジャンプ

ネプチューンの原田泰造を主人公の三谷に持ってきたのは大正解であった。と言えるこの小説の映画化であった。とにかく、これが映画初主演らしいが、原田泰造の演技が良いのである。大事な主人公の優柔不断さや詰めの甘さを自然体的に演じてくれていましたね、笛木優子も、失踪した恋人の南雲みはる役にピッタリであった。

この映画、昔の映画なのであるが、作品としては、佐藤正午の小説映画化に確実に成功した映画なのである。面白いと思う。マジで。

 サラリーマンの三谷(原田康造)は恋人・みはる(笛木優子)のアパートに1泊したところ、翌朝彼女は失踪し、行方がわからなくなってしまった。彼女を探し続ける三谷と、そんな彼を思い続ける同僚のOL早苗(牧瀬理穂)。そして数年の歳月が経ち…。
 「本の雑誌」が選ぶ2000年度ベスト1になった佐藤正午の同名小説を原作に、フリーの助監督出身でこれがデビューとなる竹下昌男が監督。ある日突然姿を消した恋人の行方を追うというミステリーの形をとりながら、現代を生きる若者の喜怒哀楽を浮き彫りにしていくヒューマン・ラブストーリーである。ネプチューンの原田はこれが映画単独初主演だが、優柔不断だがどこかさめてる若者像をナチュラルに演じている。韓国で人気の笛木の不可思議な存在感も、ドラマのミステリアス性を高めるのに貢献。全体的に80年代の日本映画を彷彿させるテイストも、どことなく懐かしいものがあった。(的田也寸志)

内容紹介

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