芥川賞受賞の「1R1分34秒」
土曜日と日曜日。信じられない暑さの中にいる。35度を軽く超えるとはどういうことだ。
とても、外に出ることが出来なくて、前から読もうと思っていた芥川賞受賞の「1R1分34秒」を読む。
ボクシングを25歳からやり始めた著者だからこそ、ボクサーの日常や戦いに臨む心の持ち方や減量方法やトレーニングの技術等がリアルに描写されている。
本当にボクシングのテクニカルなところが深く書かれている。
文章の軽妙さと登場人物達の緊張感と心根が拮抗して、不思議な魅力になっている。面白かった。新しい才能の登場である。
とにかく、主人公のストイックさとひたむきさがハードボイルドそのものなのだ。満点。
デビュー戦を初回KOで飾ってから三敗一分。当たったかもしれないパンチ、これをしておけば勝てたかもしれない練習。考えすぎてばかりいる、21歳プロボクサーのぼくは自分の弱さに、その人生に厭きていた。長年のトレーナーにも見捨てられ、現役ボクサーで駆け出しトレーナーの変わり者、ウメキチとの練習の日々が、ぼくを、その心身を、世界を変えていく―。第160回芥川賞受賞作。
青が敗れる
この作家は芥川受賞前の小説「青が敗れる」でもボクシングを書いている。
今度は高校生のボクサーの小説だ。だから、青い。
ボクサー志望のおれは、友達のハルオから「もう長くない」という彼女・とう子の見舞いへひとりで行ってくれと頼まれる。ジムでは才能あるボクサー・梅生とのスパーを重ねる日々。とう子との距離が縮まる一方で、夫子のいる恋人・夏澄とは徐々にすれ違ってゆくが…。第53回文藝賞受賞の表題作に加え二編の短篇、マキヒロチ氏によるマンガ「青が破れる」、そして尾崎世界観氏との対談を収録。
負け犬の美学
そして、どういうわけか、フランス映画で「負け犬の美学」というボクシング映画を観た俺だったのだ。この偶然。
マチュー・カソビッツ主演。49戦13勝の落ち目のボクサーを熱演した。
最盛期を過ぎた40代のプロボクサー。
こちらの話は愛する家族のため、そして自分自身の引き際のために、欧州チャンピオンのスパーリングパートナーに立候補するストーリー。
最後に、銭座試合が組まれる。ボクシングの最後だ。
この映画、負け続けてボクシングをやめていくボクサーの為にある。
映画のエンドロールがそれを教えてくれる。
負け犬の美学。まさに、ハードボイルドそのもの。
40代半ばを迎え盛りをすぎた中年ボクサー、スティーブ。たまに声のかかる試合とバイトで家族をなんとか養っていたが、ピアノを習ってパリの学校に行きたいという娘の夢を叶えたい一心で、誰もが敬遠する欧州チャンピオンのスパーリングパートナーになることを決意する。ボロボロになりながらも何度でも立ち上がり、スパーリングパートナーをやり遂げたスティーブにチャンピオンからある提案が舞い込む。そしてスティーブは愛する家族、そして自身の引き際のために最後の大勝負に出る。引退試合のリングで父として娘に伝えたかった思いとはー?
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