センセイの鞄:川上弘美

川上弘美

川上弘美の小説

川上弘美の小説は良い。何故良いのかというところからすると、それは、どこかに、ファンタジーが流れているからでもあり、どこかに、理系的な考えが流れていたりするからであろうなとも思っている。表現が軽いような感じなのに、実は結構真理っぽいねと思うところが裏に流れているので、惚れ惚れするところもあったりもする。

彼女のそのような小説は、当然ながら、映画にもなっていて、それも、それなりに味があって、良い感じもする。ほのぼのとしながら、切なくも哀しいところもあったりで、日本酒に合うなという感じもする。

今回、そんな川上弘美の小説を映画にしたものを続けて観た。そして、何とも言えない気持ちにもなった。秋だからだろうか。それとも、急に冷え込んだからだろうか。

今回は、その中から、『センセイの鞄』を紹介しておく。

センセイの鞄

映画の『センセイの鞄』

小泉今日子と柄本明の『センセイの鞄』だ。こんなに寒くなると、本当に、居酒屋のカウンターで、日本酒が飲みたくなる。そして、こんな恋があっても、良いのだろうね。ゆったりと流れるように。


センセイの鞄

月子(小泉今日子)は37歳でひとり暮らし。ひとり美味しいツマミと日本酒を楽しむマイペースな女性。ある日、行きつけの居酒屋で声をかけてきた初老の男性(柄本明)、それは高校時代の国語の担任だった。歳の差30以上、でも酒の肴の好み、人との距離の取り方、頑固な性格、よく似た2人はしばしば共に時を過ごすようになる。そしていつしか月子の中には、「センセイ」へのおさえがたい愛情が芽生えていた…。(C)2003 WOWOW INC.

内容解説

音楽劇の『センセイの鞄』

沢田研二と富田靖子バージョンの音楽劇『センセイの鞄』。


新・センセイの鞄 [DVD]

30 才余の歳の差を越えた老齢のセンセイと教え子ツキコとの淡々とした恋を描いた原作『センセイの鞄』、05 年に音楽劇シリーズの企画として上演された原作を鈴木哲也/マキノノゾミが新たに書き下ろし、マキノノゾミが演出。

内容解説

沢田研二と坂井真紀編の音楽劇となった『センセイの鞄』。


センセイの鞄 [DVD]

川上弘美の原作を、主演:沢田研二・坂井真紀、演出:久世光彦、音楽:cobaで音楽劇に。
作中で引用されるのが伊良子清白から萩原朔太郎になっていたり、センセイが朗らかなキャラクターになっていたりと、浮き世離れした場面を除けて「老境に差し掛かった男と若くない女」の恋物語に焦点を合わせている印象。個人的には、無礼な若い男のピアスを盗る場面や、ふと意地悪になるセンセイも見たかったのですが。しかしツキコとセンセイの話に主軸が置かれているからこそ、あの切ないラストシーンがある。また久世氏らしいコメディ要素も随所にあり、全体がほんのりとあたたかい(それは昭和の香りだろうか)。音楽も当たり前のように舞台に溶け込んでいて良い。時折取り出して愉しみたいDVD。

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コミックの『センセイの鞄』


センセイの鞄 コミック 1-2巻セット

とある居酒屋で、三十七歳のツキコさんは、ビールの肴にと、まぐろ納豆、蓮根のきんぴら、塩らっきょうなどを頼む。すると隣りでも同じように注文する老人が……。さても肴の趣味の合うご老体だと感心していると、その人は高校時代の恩師だと知る。この再会をきっかけに二人は、やがてゆるやかでおだやかで切なくてはかない二人へと深まってゆく……。

内容解説

この作品の静謐さを湛えたたたずまいは、音楽に例えれば、『 ショパン:ノクターン(全曲) 』に通じる味わいがあるかなあ。ツキコさんとセンセイの気持ちがふわりと通い合う、そのほのかな情感がうまく掬い上げられていて、改めて、谷口ジローの絵の素晴らしさいうのを感じましたね。空に浮かぶ月も、暮れなずむ町の灯りも、公園の木に吹く風も、森の静けさ、花見の賑わいも、そうした絵のひとつひとつが、心にしんとしみてくる。なつかしい気持ちに誘われる。あたたかな命が通う絵の見事さに、何度もため息が出ました。

 川上弘美の原作の味を生かした間(ま)の取り方の旨み、ゆったりと歩くテンポのリズム感も、実に素晴らしい。<「先生」でもなく、「せんせい」でもなく、カタカナで「センセイ」だ>という文章を描いた冒頭二頁から、「おっ!」と引きこまれましたねぇ。この掴みのうまさは天下一品、抜群にうまいっす。

 こたつに母親とふたり、ツキコさんが湯豆腐をはふはふ言いながら食べるシーン。ここは、藤沢周平の『 よろずや平四郎活人剣〈下〉 (文春文庫) 』の一場面がオーバーラップしました。さすが、『 孤独のグルメ 【新装版】 』を描いた谷口ジローだけあって、食べ物を食べ、酒を飲むシーンの絵は絶品です。おそれいりました。

 おしまいに、本単行本の帯に記された原作者と作画家の言葉を引かせていただきます。

 <正直なところ、このような恋物語を描いたのは初めてのことです。ほとんど小説のままに、センセイとツキコさんといっしょに歩いてみよう。そう思った。>──谷口ジロー
 <こういう話だったんだ! 谷口さんに描いていただいて、あらためて、いや、はじめてほんとうに、知ったような心地です。>──川上弘美

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小説の『センセイの鞄』

本家本元の『センセイの鞄』。愛おしく切なく哀しくほっこりもするのなら、秋の夜更けには、日本酒を傾けながら読むのも良いだろう。


センセイの鞄 (文春文庫)

センセイ。わたしは呼びかけた。少し離れたところから、静かに呼びかけた。
ツキコさん。センセイは答えた。わたしの名前だけを、ただ口にした。
駅前の居酒屋で高校の恩師・松本春綱先生と、十数年ぶりに再会したツキコさん。以来、憎まれ口をたたき合いながらセンセイと肴をつつき、酒をたしなみ、キノコ狩や花見、あるいは列車と船を乗り継ぎ、島へと出かけた。その島でセンセイに案内されたのは、小さな墓地だった――。
40歳目前の女性と、30と少し年の離れたセンセイ。せつない心をたがいにかかえつつ流れてゆく、センセイと私の、ゆったりとした日々。切なく、悲しく、あたたかい恋模様を描き、谷崎潤一郎賞を受賞した名作。

内容解説

 そして、『センセイの鞄』。甘えるのが苦手なひとというのは、男でも女でも、大抵の場合、恐ろしく恋愛が下手である。妙に強くて、助けを求めるのが嫌いで、独りで何でも解決してしまう。そんなふうだから、異性から敬遠されてしまうのだ。あいつは、放っておいても大丈夫だ、と。この作品は、容易に甘えられないひとが、心置きなく甘えられるひとを見つけた、そんな恋愛小説である。だからこそ余計に、おしまいの29行は、心の底が抜け落ちるように哀しい。

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