久しぶりに、横浜流星について、コメントすることにした。
横浜流星の漢
彼について、記事を書かなかった、この2年くらいの間の彼の俳優としての成長が物凄いと感じたからだ。
その凄さというのは、彼の内面にそもそも厳然と存在している男の本性部分が❝漢(おとこ)❞として、静かだが心の奥底で深く深く活きていると感じるところにある。
それは、今の若手の俳優の中ではあまり感じられない感覚とも言える。それは、今は亡き高倉健さんの心の奥底にあるような❝漢❞の感性なのだ。
それは、俳優としての演技の表情に現れる。
高倉健さんは、群れない男のはがねのような漢の心。横浜流星は、柔らかく繊細な姿の奥に隠れた深く優しく哀しい漢の心。
映画を観ると、舞台を観ると、横浜流星の漢の姿・表情にここ数年で更に深みが増したと思えてくる。
巌流島 舞台 横浜流星 パンフレット 明治座
この男、舞台でも、ようやく、『巌流島』で『宮本武蔵』を演じることが出来た。あの伊藤健太郎に事件で開演が伸びた時の流れの中で、まさに漢としての宮本武蔵の武士の心情を体得したのではないかとも感じたのであった。
藤井道人監督と横浜流星
横浜流星と藤井道人監督のタッグ。この二人の映画が、今、公開中の『ビレッジ』になるわけだ。そう言えば、若かりしの横浜流星は、藤井監督の初期の映画である『青の帰り道』に出演していたな。
彼らのコンビは、これが6回目。二人は歳は離れているが、親友とのこと。最近の二人のTVでのインタビューで話が出ていたが、一緒に部屋で映画を観たりしてぼ~ッとしていることが二人も好きらしい(?)。
だが、一旦、映画のことになると、二人の信頼関係の絆は深い。
藤井監督は、こんなことを言っていた。
流星は、すごく信じて待ってくれる人間なんです。脚本を読んで、「ここおかしくない?」とか「もっとこうしたい」とか、一切言いません。「いいね、待ってるよ」としか言わない。「監督がやりたいことをやって欲しい。僕はそれを信じて演じるから」と。そのうえで、すごく迷ったり、ビジュアルで相談したいことがあれば一緒に考えてくれる。でも基本的には信じて待つというスタイルでいてくれたから、この結果が生まれたのだと思います。すごく難しい役だったと思うんですよ。脚本には、「怒っているようで、泣いているようで、怯えているような顔をしている」と書いてあったりして。どんな顔だよ! っていう(苦笑)
出典:マイナビニュース
映画 ヴィレッジの横浜流星
この映画。小さな村の中でのサスペンスフルな暗く沈んだ閉鎖世界。その中で、横浜流星は、今まで良く映りだされてきた綺麗で端正なルックスからは考えられないほどの驚くほどの変貌ぶりを魅せてくれる。
無精髭。ぼさぼさの髪。とても暗いダーティな服。くわえ煙草。そして、海底に深く沈んだ死んだような眼。
この映画のポイントには、能がある。村には能舞台があり、能の舞が催される。そして、能面。能面の不気味な顔。ここに表現されるのは、人間の内面のペルソナかもしれない。ペルソナとは、人物や個人のこと。転じて、人間の性格である人格や位格のこと。直接的には、古代ギリシアでの俳優のかぶる仮面のことをさしていたらしい。そこから、その仮面の奥にある心の実体を指すものとされるのである。
横浜流星のこの映画での顔の表情が、役柄の主人公優の内面を醸し出してくる。刻一刻と変わっていく多彩な表情に、驚くであろう。ダークな闇の世界で生きているところから明るいところに出ては、また、深い深い闇落ちをしていく。
横浜流星は、その内面のペルソナを、能と能面という変わらないがその表情が不気味で不可思議な顔というものと対比しながら、今回、信じられないくらいの素晴らしい深い演技で、我々を驚かせてくれる。
横浜流星が、ここまで、光と闇を演じ切ったのは、凄すぎる。
そして、今回の演技に、横浜流星のペルソナの骨格とも言えるであろう、❝漢❞の心性がより良く現れているように思えてならない。
共演をしていた黒木華は、横浜流星を一言で称して、『男』と言った。役者としても、人間としても、横にいるだけで、彼の❝漢❞を本当に感じるのであろう。
彼は、多分、武士であり、男であり、男の友情を大事にし人を柔らかく包むことのできるであろうペルソナを持った、❝男❞なのである。
彼のこれからの役役者としての未来に、高倉健さんを超える漢を感じるのは、多分、俺だけではないだろう。流星は、健さんのように背中で物語を作れる。
横浜流星は超える。これから、閉塞した世界の中で、我々の心を掴む人間の奥底の心性を深く静かにでも熱く語ってくれるであろう。彼を見つめて追いかけていくことで、それが癒しと救いになるような。それは、日本のキアヌ・リーヴスであり、デンゼル・ワシントンであるように。
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