この男、切ないほどに、強く、優しい
良い時代劇に出会えた。これほどまでに、切ない時代劇は久しぶりである。観たかいがあった。時代は、新しいヒーローを得たと言って良いだろう。『居眠り磐音』。主人公の坂崎磐音。哀しい過去を持った浪人の切ない剣が胸に突き刺さる。今までにない新しいヒーローの登場だ。こういうハードボイルドなヒーローがいたっていいじゃないか。
ストーリーはこんな感じだ。
坂崎磐音は、故郷・豊後関前藩で起きた、ある哀しい事件により、2人の幼馴染を失い脱藩。すべてを失い、浪人の身となった-。江戸で長屋暮らしを始めた磐音は、長屋の大家・金兵衛の紹介で、昼間はうなぎ屋、夜は両替屋・今津屋の用心棒として働き始める。そんな折、幕府が流通させた新貨幣をめぐる陰謀に巻き込まれ、磐音は江戸で出会った大切な人たちを守るため、哀しみを胸に悪に立ち向かう。
居眠り磐音の魅力
主人公の坂崎磐音の魅力を箇条書きにしておこう。このヒーローとは、
縁側で猫が居眠りしているような存在
能ある鷹は爪を隠す
上品で穏やかな立ち振る舞い
受けて流す隠し剣 強い
周りの人を想う気持ちが静かに強い
誰に対しても、平等
人情に厚い
悪を憎み、ひとりでも挑む
かたじけないと良く言う
剣術が凄い
この映画、剣での戦い場面等が結構多い。映画が始まって、かなりの死闘が繰り広げられる。昨今の時代劇映画はどちらかと言うと、この剣での戦い部分が少なかった感じがあるが、この磐音は違う。最初から最後まで、武士道の基本・ベースである剣術を全面に押し出してきている。素晴らしい。
佐々木蔵之介が演じる剣術道場の師範(江戸の神田・神保小路の直心影流佐々木道場)も良かったし、その剣裁きもかなり良かった。磐音の剣を構えた姿が縁側で日向ぼっこをして居眠りしている年寄り猫のようにみえると言われる「居眠り剣法」。それを映画で感じさせてくれた松阪桃李の演技も良かった。この映画、剣の部分もかなり必見です。
予告編(公式サイト)
この予告編だけでも泣ける。
音楽
このMISIAの歌を聴くだけでも泣ける。
佐伯泰英の小説「居眠り磐音シリーズ」
さすが、累計2,000万部突破の時代劇小説。2002年から刊行され、2016年までのシリーズものになっている。全51巻もあるのだ。スピンオフ作品もあり。魅力のある磐音の剣と人情と愛と家族をじっくりと味わってみたいものです。幸せになれる何かが見つけられるはずです。
陽炎の辻
居眠り磐音シリーズはNHKで既に放映されている。こっちは、2007年から2017年で「陽炎の辻~居眠り磐音江戸双紙~」シリーズでテレビドラマ化もされているのだ。山本耕史主演。
映画の続編は?
最初の居眠り磐音の部分の映画が始まったとみるべきだろう。この時代劇映画は新鮮でこれからも小説シリーズをテレビドラマの「陽炎の辻」のように、シリーズ化してほしい、座頭市のような存在になってほしいと切に思う。そして、松阪桃李と木村文乃のコンビに期待をしたい。
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