メンドクサイけど温かい人達
貴方の人生で、貴方の周りにいる隣人で鬱陶しいのだけれど憎めない人達はいるかい?そして、その人達は殆どがいい加減そうに見えるけど、時折、とても鋭い一言を言ってくれて、実は、自分の弱いところや優柔不断なところにグサッと刺さることを軽く言ってくれて、実はとても貴方のことを考えてくれる人だったりすることはないかい?
実のところ、この漫画『めぞん一刻』に登場する全ての人がとてもとてもキャラが立ちすぎていてメンドクサソウで大変なのだが、その全ての人達がそれなりの心に刺さる指摘をしたりするので、そこは見過ごしてはいけないところなのだね。つまりだ。ふと、その人の日頃の振る舞いからその人を軽く考えてしまうことが多いのだが、実は、良く貴方を見ていてくれて大事な指摘をしてくれることが多々あるのだ。そこを軽く通り過ぎてきてしまったことってないかい?この漫画には、そういう我々の日常を教えてくれるような人間賛歌があるのだね。高橋留美子という作家の凄さはここにもあるのだね。人はナカナカ奥深くて、善の世界に立てば、良き人が自分の周りには多くいるのだと。
優柔不断を超えていけ
そんなこんなで、
人は優柔不断で不安定な心になった時に、どうやって、そこを超えていくか?そして、周りの人達はどうやって、そういう状態の人をサポートしていくか?そんなところを教えてくれる場面をこの漫画でみていこうではないか。
例えば、一刻館の住人の朱美は、五代と彼女の関係を疑う響子さんに対して、ハッキリと響子さんの心の葛藤を見抜いて、ストレートに次のように言い放つ。
いつもは下着姿でだらしなく酒ばかり飲んでいるけど、見るところはしっかり見ている。人は自分が思っている以上に、その人のことを一角置いていれば、良くその人の心を見ているのだ。響子さんの心の中の葛藤や優柔不断さをこんな言葉で刺してくるのだ。
こんな場面もある。八神いぶきのストレートな響子さんの心に対する指摘。JKの若さゆえの発言であるが、響子さんの心に刺さってしまう言葉。ハッキリしないのは嫌い!
意外に、冷静になって人を見つめているところもある八神。若者も恐ろしいね。
ライバル三鷹の憎めない五代に対するスタンス。
常に優柔不断ではない自分に自信を持ったストレートな三鷹であるが、色々な重要な場面で、心の優しさが垣間見れる。それが結果として、優柔不断な結果へと三鷹を導いていく。しかし、それも、また、とても幸せな結果になっていくようなところも良い。
常に、優柔不断な響子さんに対してアグレッシブに問いかけていく三鷹。
一の瀬さんは良く知っている。響子さんの心の揺れ具合と優柔不断さを。
四谷さんの凄いところは、人の弱みと優柔不断さをすぐさまに自己利益に変えてしまういつもの変態さにあるのである。ある意味、凄すぎ。
別の角度とは言え、彼は、人の心の弱さに付け込めるほどに、人をしっかりと観察しているのである。トレンチコートは伊達ではないのだ。
考えてみたら、この漫画は優柔不断な二人の主人公の響子さんと五代君を巡る人間関係の物語なのである。そして、周りの脇役達はそれぞれの興味のあることに関しては全く優柔不断でなくストレートなのである。優柔不断という観点から、この漫画を再読すると、また違った心理学の勉強が出来るかもしれない。優柔不断であることは意思決定を鈍らせる。そして、周りの人はヤキモキもする。優柔不断さの悪い面と良い面を面白おかしく教えてくれる漫画、『めぞん一刻』。勉強になるなぁ。
優しく見守っている人達
優柔不断さを超えた向こうにあったもの。
音無老人の心温まる一言。静かに大事に自分の息子の嫁を見守っていた人の心。
響子さんのお父さんの娘を想う気持ち。
婆ちゃんの五代君と響子さんを思う気持ち。
年を重ねた人達の温かい気持ちにも、ホッコリする。大事なことだな。幸せになるためには。こういう人達の存在が。
歳を取るということは酸いも甘いも全て腹に収めて、優柔不断な自分を戒めて大人として出来上がっていくことを指すのかもしれない。
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