あなたの人生の物語(タイムパラドックス系SF)

SF映画

あなたの人生の物語:テッド・チャン作

映画「メッセージ」の原作であるテッド・チャンのSF小説だ。彼の短編集である「あなたの人生の物語」の中にあるまさに、その『あなたの人生の物語』がこれだ。この短編集(ハヤカワ文庫)には、『バビロンの塔』『理解』『ゼロで割る』『あなたの人生の物語』『七十二文字』『人類科学の進化』『地獄とは神の不在なり』『顔の美醜について-ドキュメンタリー』収録されている。ハヤカワ文庫の後ろの紹介には、

地球を訪れたエイリアンとのコンタクトを担当したルイーズは、全く異なる彼らの言語を理解するにつれ、驚くべき運命に巻き込まれていく・・・ネビュラ賞を受賞した感動の表題作(映画化名「メッセージ」)はじめ・・・・

とある。もう少し具体化すると、以下のようになる。

異星人が地球各地百十二箇所に設置した通信装置、ルッキンググラス。その装置は、大きな樽の円周に七本の脚と七つの目を配置した生物ヘプタポットを、まるで目の前にあるかのように映し出す。地球人類は、個々の装置に言語学者と物理学者のチームを配置。合衆国の牧場に設置されたひとつには、ルイーズ・バンクスとゲーリー・ドネリーがその任についた。ヘプタポッドたちは非常に協力的であったが、向こうから何かを知ろうとするような行動はしない。

やがて、彼らの使う表義言語〈ヘプタポットB〉を研究していたルイーズに、ある変化があらわれる。ルイーズは巨大で複雑なひとつながりの記号であり前後左右の切れ目のないヘクタポッドの言語(文字)を理解するなかで”思考の道筋”なく”前提と結論が交換可能なやりかたで黙考”できるようになり、過去・現在・未来を一度に体験することもできるようになる・・・・。そこで重要になってくるのが自分の娘との関係になってくる。この小説の難しいところは、主人公が、過去・現在・未来を同時体験するというところにあるようだ。そう、映画でも、何度観ても難解なのが、「これから未来に起こる娘との思い出について」というようなパラドックス的な話になってくるのだ。そして娘である「あなた」にたえず呼びかけ、未来に生きるあなたのことを思うのですが・・・ 線形でない時間、そう同時体験できる非線形の時間がテーマになっている。

ここに関しては、いくつかの「あなたの人生の物語」ブログで論じているようだが、今一つ私は理解できていないところがある。例えば、

そのはなしには実際に議論されている言葉と思考の関連性についての言語学の仮説がベースにあるようで、関連した本を読んでみたくなった。「使用言語に思考は影響される」・・・

とか、、

新しい時間物のSF。これがねえ傑作よ。
作者の広い知識と、それを横断して物語を形作る能力に驚嘆しますわ!
言語が文化背景を通して時間の物理学につながっていくんですが、それがすごい。ざっくりいえば、言語の背景に異星人達ならではの文化があって、文化はその背景に、世界の認知があって、世界の認知ってのは今の物理学の大きなテーマなんです。そこから「時間」の扉が開くんですけど、それが全然、荒唐無稽じゃないんですよ。
映画「メッセージ」視聴済みならさらに深く楽しめるでしょう。

とか、、。

未来を想い出すということ

そうなのだ。この「あなたの人生の物語」の一番重要なテーマは、「未来を想い出す」ということなのだ。確かに、映画「メッセージ」もエイリアンとの交流・表義言語〈ヘプタポットB〉の解釈・ルッキンググラスにさも集約しているような表出になっているが、実のところ、テッド・チャンの言いたいことは非線形時間の在り方なのだ。そのことに、やっと、鈍感な私は気が付いたのだった。だから、小説の中には、「フェルマーの最小時間の原理」にまで触れられている。例えば、

光線は動き始める方向を選べるようになる前に、最終的に到達する地点をしっていなくてはならない。

そして、人類は物理的法則を考えるときに因果的記述として取り扱うのを好む。それは、事象の時系列的、因果関係的解釈となり、ある瞬間から生じる、次の瞬間、原因と結果は過去から生じる未来という連鎖反応をつくりだす。対照的にヘプタポッドという異星人が物理的法則というか物理的属性というのは、ある一定の期間の経過についてのみ意味を有することになる。目的論的解釈というのか、最初と最終の状態を知っておかなくてはならない。原因が発生する前に結果に関する知識が必要なのだ。そう、彼らの世界では、人類のような因果関係記述のある物理的法則はないのだ。過去・現在・未来が同時化するのだ。ここに、この小説及び映画「メッセージ」のタイムマシーン映画たる意味がある。この小説及び映画は単なる異星人との遭遇と思ったら大間違いです。そうです、時間とは何かを教えてくれているのです。

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突如地上に降り立った巨大な宇宙船。謎の知的生命体と意思の疎通をはかるために軍に雇われた言語学者のルイーズ(エイミー・アダムス)は、物理学者イアン(ジェレミー・レナー)とともに、“彼ら”が人類に何を伝えようとしているのかを探っていく。そして、その言語の謎が解けたとき、彼らが地球にやってきた驚くべき真相と、人類に向けた美しくもせつないラストメッセージが明らかになる――

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