タフでなければ・・・・
言わずと知れた、名文句、だ。
ハードボイルド作家のレイモンド・チャンドラーの最後の作品『プレイバック』の中のフィリップ・マーロウのセリフだ。
女性から「あなたのようにしっかりした男がどうしてそんなに優しくなれるの?」と聞かれた私立探偵フィリップ・マーロウが答えた言葉。
If I wasn’t hard, I wouldn’t be alive.
If I couldn’t ever be gentle, I wouldn’t deserve to be alive.
生島治郎の訳では「タフでなくては生きていけない。やさしくなくては生きている資格がない」。
清水俊二の訳では「しっかりしていなかったら、生きていられない。やさしくなれなかったら、生きている資格がない」。
相手のトラブルや哀しみと自分が同じ土俵に立てた時、相手を思いやれるときに、初めて人は優しくなれるって、ことかな。渋いね。
To say goodbye is die a little.
レイモンド・チャンドラーを尊敬する作家は多い。原尞は当然だが、多分、村上春樹も尊敬している人の一人だろう。何故、彼にここまで興味を持つのか、考えてみた。
レイモンド・チャンドラーの有名な言葉はこれだ。
「To say goodbye is die a little.
(さよならをいうのはわずかのあいだ死ぬことだ)」コール・ポーターは「Everything We Say Goodbye(I Die a Little)」と歌う。
離れるのは少し死ぬことだ。それは愛するもののために死ぬことだ。どこでもいつでも、人は自分の一部を残して去っていく・・・とフランスの詩人エドモン・アルクールの詩。
ロング・グッドバイ(The Long Goodbye) 村上春樹訳
『ロング・グッドバイ』は別格の存在である。
そこには疑いの余地なく、見事に傑出したものがある。――村上春樹(「訳者あとがき」より)
社会現象となった『長いお別れ』新訳版、文庫に登場。
私立探偵のフィリップ・マーロウは、億万長者の娘シルヴィアの夫テリー・レノックスと知り合う。
あり余る富に囲まれていながら、男はどこか暗い蔭を宿していた。
何度か会って杯を重ねるうち、互いに友情を覚えはじめた二人。
しかし、やがてレノックスは妻殺しの容疑をかけられ自殺を遂げてしまう。が、その裏には悲しくも奥深い真相が隠されていた……
気になる文章を幾つか探してみた。
フィリップ・マーロウは意外や意外、当たり前のことを平然と会話では言うんだ。そのままに。
しかし、世の中、その当たり前のことを言えない人が如何に多いことか。
慮ってしまうという心の持ちようなのだが、逆に、ストレートにそのままのことを伝えることがその人のことを一番考えてあげているという場面が多い。
こういうところにも、ファンはフィリップ・マーロウの漢気を感じるのだろう。
ハヤカワ文庫(P.56)
私はさっと振り向いて、厳しい目で彼を睨みつけた。「いい加減にしろ!」、私はほとんど怒鳴りつけていた。「どうしてそんなにいつもいつも、物事をややこしくせずにはいられないんだ」
「すまない」
「すまないでは収まらないことが世の中にはある。君のような人間はいつだって、手遅れになってからすまながるんだ」
同(P.240)
翌朝私は、前夜手にした大きな報酬のせいでいつもより朝寝をした。一杯分余分にコーヒーを飲み、一本余分に煙草を吸い、一枚余分にカナディアン・ベーコンを食べた。そしてもうこれから二度と電気剃刀を使うまいと、三百回の誓いを立てた。それでようやく普段の1日となった。
フィリップ・マーロウの教える生き方
この本を読めば、君も、ハードボイルド探偵の気持ちにはなれるかもしれないぜ。
クールでタフで優しくて。
フィリップ・マーロウの言葉から人生を学ぼう。愛、女、死、酒、チェス、煙草、ハリウッドについて――レイモンド・チャンドラーの生み出した探偵マーロウの至言をテーマごとにチョイス。全篇村上春樹の名訳で贈る珠玉の名言集。訳者による巻末解説も収録!
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