福永武彦と池澤夏樹
知の仕事術(インターナショナル新書) (集英社インターナショナル)
池澤夏樹の小説を読むのが遅すぎたということになるのであろうか。手始めに、昭和62年度芥川賞受賞の『スティル・ライフ』を読んだら、ビックリした。面白い小説であったのである。
人は往々にして、出会うべきものや出会っておくべきものを簡単にスルーして知らないまま、人生を過ごすことが多い。小説系も自分では好きなのに、何故か、私は、池澤夏樹をスルーしてきたのである。全く読んでこなかったのである。昭和を過ぎ、平成になっても。2つの時代の長い年月を経て、私は彼に出会ったのである。
それは、池澤夏樹が福永武彦の息子であったことから、彼の小説を迂回してきたのだろうか?否、むしろ、福永武彦は自分にとって、結構良き小説であったから無視することはなかったはずなのに。
福永武彦 新潮日本文学アルバム〈50〉
かように、人生には、遅きに失することが多い。後悔しても始まらないので、これから、少しづつ、池澤夏樹の小説に入っていくこととしよう。
父が子に。二世代の小説家。それも、かなりのレベルで世界的な。そこにあるのは、福永武彦の時から垣間見れた理系の感覚であったのだろうか。DNAの長い歴史になる。
福永武彦を語る〈2009‐2012〉
文学と科学の親和
スティル・ライフ (中公文庫)
この小説についてのカスタマーレビューでは、次のようなコメントがある。
“この世界がきみのために存在すると思ってはいけない。世界はきみを入れる容器ではない。”冒頭の言葉から引き込まれる芥川賞受賞の本書は”理系の村上春樹”と評する人の言葉にも納得する科学と文学が両立された美しい静けさが心地よい。個人的にも、やはり多くの読者と同じく、冒頭の文章から言葉の魅力に作中世界に引き込まれたわけだが、翻訳や詩畑、そして理系の大学を出身という著者の背景を知り”なるほど”と、その言葉の巧さ、冷たさ、豊富さが腑に落ちた。一方で小説に【明確な起承転結、説明】を求める人には刺激が足りないかも?と同時に思ったけれど、こちらは好みというか、あっさりとこってり。どちらの料理好きかといった感じなので。。 魅力的な文章を知りたい誰か。あるいは一人静かに読書したい誰か。はたまた村上春樹好きな方にもどうでしょうか的にオススメ。
カスタマーレビュー
小説の中身
ぼくは、アルバイトをしながら人生模索中の若者。同じアルバイト先の染色工場で出会ったぼくよりも少し年上の佐々井との二人だけの物語なのである。佐々井が職場を辞めても、ぼくと佐々井はぼくの行きつけのバーで話をする。そこにあるのは、佐々井の理系的な宇宙の話から、ぼくの科学的なものの見方なので、とても、新鮮に、スティルな静かなある意味叙情的な二人の関係があるのである。そして、地球の見方の視点が少しだけ、今までの文学的な視点をずらしたところにある感じがするのだ。
そして、佐々井は、ぼくに、自分のある仕事を手伝ってくれと言う。それは株の運用である。横領した金を清算するために、ぼくは佐々井の「心優しき伴走者」になるのだった・・・・。
その仕事を通じて、ぼくはどう変わっていくか。佐々井はどうなるのか?
まあ、そんな感じのストーリーだね。凄く古い昭和の最後の小説なのに、今も、輝きがあるような青春小説なのは、その宇宙性や科学性にあるのだろうか。
池澤夏樹=個人編集 世界文学全集
池澤夏樹の面白さは、彼が個人編集している「世界文学全集」があることだ。彼の好きな文学を紐解いていくことは結構楽しいことかもしれない。
存在の耐えられない軽さ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-3)
アフリカの日々/やし酒飲み (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-8)
マイトレイ/軽蔑 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 2-3)
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