成功者K:羽田圭介

羽田圭介

何とも、考えたものだな。ここまで、描くかっていう感じですね。驚きました。果たして、これは全て事実なのか、それともフィクションなのか?

芥川賞を受賞して、受賞者のその後の生活をリアルに再現しているような小説。マスメディアの扱いやテレビ業界のことやファンとの関係やお金のことやセックスのこと等々をここまで書いていいのかという世界の本である。羽田本人が6割は事実のことと言っているのだから、ナカナカ大変なことである。

面白いのは、作者の名声と名誉と金と女に対する気持ちの揺れ動きが如実に出ていて私小説風になっているところである。ウーム。成功した人間の意識と行動はこう変化していくんだなという辺りは勉強になりましたね。ソレカラ、◎◎が大きいこともセックスが好きであることも多分6割の真実の中に入っているようで、ムムムという感じでありました。自分を曝け出しているなぁ。マジで。

しかし、終わり方は何だったのでしょうかね?そこは面白くなかったな。残念でありますね。書き過ぎたとも思ったのでしょうかね。

週刊文春評:成功者K

週刊文春の羽田啓介の友人である記者の記事が、一番この小説に対する客観的な評価がある感じがする。


成功者K

主人公は羽田圭介本人? 事実と虚構の境界線上に立つ小説

タイトルといい、表紙といい(表紙には著者である羽田圭介氏自身の顔写真が大きく使われている)、やけに気にかかる本書は、こんなふうに始まる。

《Kは成功をおさめた。それはもう、多大なる成功だった。》

主人公はタイトル通り、「成功者K」だ。小説家の彼は、芥川賞受賞を機に、テレビをはじめとする数々のメディアに出演し、それによって多額の収入を得ると同時に、生活のランクも上がり、近づいてくる複数の女性と関係を持つ。そんな主人公の姿を、そのまま著者自身の姿に重ねる人も多いだろう。芥川賞を受賞して以降、テレビで羽田さんの姿を目にする機会が増えたのは事実だ。個人的な話になってしまうが、羽田さんと私とは以前から友人関係だ。

だからこそ、読みはじめは、あえて著者と主人公を同一視させる狙いはあるものの、完全なフィクションだな、と思っていた。

こう思ったのには、作中のキーパーソンとして登場する「カトチエ」の存在もある。歌人で小説家でもあるという彼女のプロフィールは、これを書いている私自身と重なる。作中に出てくるように、芥川賞待ち会として一緒にカラオケボックスに行ったことも、本を紹介するインターネット番組の司会を共に務めていたことも、確かに事実だ。しかし「カトチエ」の言動は、私の過去の言動と一致しない部分も多々ある。

やっぱり小説なのだ、虚構なのだ、と思いつつも、ページを繰るうちに、ふと手を止める。本当に私はこんな発言をしていなかっただろうか。本当に私はこんな態度をとっていなかっただろうか。考えるうちに自信がなくなり、目の前の景色が揺らぐような錯覚すらおぼえてしまう。

テレビ局内や女性宅などの緻密な情景や、ファンとのやりとり、日々変化する自意識についての描写が、やけにリアルで、とても作り物だと思えない。

また、Kの成功は必然的なものではなく、奇跡的なものなのではないかと、K自身が考えるシーンがあるのだが、読者はどちらが正解なのかわからない。そして気づかされる。どちらも正解であり不正解だと。Kがいる場所だけではない。私たちの存在そのものも。

様々な境界線上に立っているような小説だ。必然的と奇跡的。事実と虚構。現実と夢。明らかにさせようとするうちに、はまり込んでしまう。傍観者として小説を外から眺めていたつもりが、いつのまにか実体験のように感じられる。

読み終えてもなお、成功者Kの存在が離れない。

評者:加藤 千恵(週刊文春 2017.04.13号掲載)

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