酒とハードボイルド

酒とハードボイルド

酒には限界がある。カート・キャノンの「酔いどれ探偵街を行く」に確か次のような記述がある。

酒は食道をまっすぐ下って胃袋に穴をあけてはくれるが、心の傷跡までは食い取ってくれない。

酒は一瞬の慰めはしてくれるが、有効絶対なものではないのだ。だが、ハードボイルド小説には酒は欠かせない。酒がないと多分絵にならないのだ。そうではないか。日本の北のハードボイルド小説でも、「探偵はバーにいる」ではないか。

そんなこんなで、酒とハードボイルドを探検してみよう。何か、人生の何かを教えてくれるかもしれない。

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アイリッシュ・ウィスキー

ウィスキーとハードボイルドは切っても切れない関係だ。ロバート・B・パーカーの小説の主人公探偵のスペンサーは、ウィスキーに関しては、確か、バーボンウイスキーかアイリッシュウイスキーしか飲まないはずだ。酒に関しては、かなり限定的で変わった男とも言える。

レイモンド・チャンドラーの「指さす男」では、ホット・ウィスキー・レモンを飲ませていた。チャンドラー自身も、ホット・ウィスキーが好きだったようだ。

バーボン・ウィスキー

バーボン・ウィスキーもチャンドラーの小説には必須のアイテムだ。「かわいい女」では、こんな描写がある。失踪した兄を探してくれとマーロウにかわいい娘が訪ねてきた。映画の都ハリウッドで探偵が活躍する。金にも権力にも女にも屈しない男の飲む酒は、バーボン・ウィスキーと相場は決まっている。

私は手をのばして、ウィスキーの瓶をデスクの上においた。三分の一ほど残っていた。オールド・フォレスターだ。いったい誰にもらったのだ。緑色のラベルの品物だ。お前などが飲む品物ではない。

ビール

ビール好きの探偵は、ロバート・B・パーカーの小説の主人公探偵のスペンサーであることは誰でも知っている。小説「レイチェル・ウォレスを探せ」では、次のように言わせている。

「ビールしか飲まないのか、ミスター・スペンサー?」

スペンサーが愛したビールは「アムステル」だ。ハイネケンではない。オランダのビールだ。ただ、アムステルは1968年にハイネケンに買収されている。しかし、アムステルのまま販売は継続されている。しかし、日本では、ハイネケンのように、売れてはいない。

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