コンビニ人間:村田沙耶香

小説
スポンサーリンク

村田沙耶香、芥川賞受賞、おそるべし

消費税が変わったので、この小説を読み始めたわけではないけど、さすがでした。そう思える小説に遅まきながら出会えた自分の愚鈍さも感じないわけにはいかない今日でした。

芥川賞受賞作品であることを知っていたけど、読んでいなかった。

そして、読み始めてすぐに思ったことが何よ、この小説の軽さ・平凡さとかで、どうなのよ、こんな文章・内容で芥川賞??ということだったのだけど、読み進めていくうちに、待てよ、待てよになり、何なの、何なの、この設定はになったのだ。

最後は天晴れに変わりました。村田沙耶香、畏るべし、です、。

コンビニ人間 感想

キャラ強すぎ登場人物よ

とにかく、この主人公のキャラが立ち始めてから、この小説のイメージが変わったのだ。18年間、同じコンビニでアルバイトをする女性の古倉さん。彼女が主人公だ。18歳から18年間、店長は今、8人目に代わっている。

36歳。彼女はコンビニの無機質的な存在が好きなのだ。彼女は18歳の時にコンビニ店員として生まれたと認識している。そうなってしまうのは、彼女の生き方にある。18歳になるまで、彼女の世間との接点がポイントになる。どうも世間の考え方と自分の考え方や行動が一致しないのだ。

ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がコンビニに来る。

こいつが次のキャラだ。彼もある意味壊れていて、ムラ社会、「普通」の中に入ることが出来ない。しかし、それを古倉さんとは違って、怒りという形で対処しようとする。そして、傷つく。

「普通」になれない白羽は簡単にコンビニを辞めさせられ、消える。そして、少し経ち、古倉さんの前に現れ、古倉さんは結果、白羽を自分のアパートで飼うことにする。面白い展開だ。

古倉さんと白羽の異質さが本当に異質なのか、それとも、「普通」や「世間」という仮面が異質なのか、この小説は問いかけてくる。平易な文章の中に、人間の存在感を問う哲学な要素がふんだんに散りばめられている。面白いゾ。不思議だが、勉強になるな。

コンビニ人間哲学

この小説の淡々とした文章に、コンビニ人間の哲学があるよね。以下、抜粋してみよう。

コンビニ人間哲学の小説からの抜粋

そのとき、私は、初めて、世界の部品になることができたのだった。私は、今、自分が生まれた。世界の正常な部品としての私が、この日、確かに誕生したのだった。(P.20)

コンビニで働いていると、そこで働いているということを見下されることが、よくある。興味深いので私は見下している人の顔を見るのが、わりと好きだった。あ、人間という感じがするのだ。(P.63)

正常な世界はとても強引だから、異物は静かに削除される。まっとうでない人間は処理されていく。そうか、だから治らなくてはならないんだ。治らないと、正常な人たちに削除されるんだ。家族がどうしてあんなに私を治そうとしてしてくれるのか、やっとわかった気がした。(P.77)

コンビニ人間哲学が教えるダイバシティ

「世界」に適合できないということはどういうことなのか?

 周りの人々の言う「普通」とは何なのか?

人間は人と上手に折り合わせていかなくては、生きていけないのか?古倉さんと白羽という発達障害的と世間で言いそうな二人を通じて、「世界」と「普通」に調和しない・適合しないことが本当に悪いことなのかを問うています。ダイバシティとか多様性とか世間は言っているが、本当にそれを人々は許容しているのでしょうか?そんな問いかけもあるような気がします。

しかし、小説の最後のあたりにあるように、この古倉さんのような生き方が自分にとって必要だと思えるのなら、それは幸せなことなのではないかという気がします。周囲の人々が「普通」であり「世界」にいることを強要されたとしても、結局決めるのは自分自身。古倉さんはコンビニ人間であることで自分の存在を肯定します。勝ちだ、多分。

コンビニ人間のまとめ

周囲と調和していくとか、いじめを受けないように上手に立ち振る舞うとか、はっきり言って、めんどくさいことが多いですよね。社会とか集団とか組織の中に入ってしまうと。それでも誰もが自分をなんとかそんな家や学校や会社や社会という<世界>になんとか適合させようと一生懸命日々努力している。誰もが、そこ=ムラから浮いてしまって、悩むことや苦しい思いに捕らわれたことがあるに違いない。周りの人から排除されることが怖いのです。でも、それって、どうなのよと作者は教えてくれています。

いいじゃん、ムラ社会から隔離されても。自分の価値基準で人に迷惑をかけていないのであれば。周りの人の勝手な思惑も「普通」や「世界」のお決まりかもしれないけど、そこに固執しなくてもいいじゃんと教えてくれているような気もします。その「普通」って、勝手に作り上げられてしまった周りの虚像ではないの?と。

周りの上手にやらないと大変かもしれないけど、でも、それが全てではないよね。自分の価値基準があれば、それに従うことだっていいじゃん、なのかもしれません。

うーん、この小説は平易だけど、奥が深いなあ。勉強になりますぜよ。

https://twitter.com/sayakamurata

https://booklog.jp/author/村田沙耶香

コメント

タイトルとURLをコピーしました